サタケ家から緊急電話-1

健太の留学

日々充実の健太

ニックとは少し距離

ケンタは、ジュニアでトップ3の成績でハイスクールに進級、語学もネイティブの子供たちと変わらない。顔もアイヌ民族系のほりの深い顔立ちで、日本人には見えない容貌だ。今ではスポーツも万能で、バスケもフットボールもニックよりレベルが上がって、頼もしい17歳だ。ニックにしては、親友がどんどん成長するのが寂しいような、うれしいような複雑な心境だ
「ケンタは、本当に日本から来たのか?」と、疑っている。実際は留学当初から付き合って、公私ともに面倒見て来たのだが、段々手の届かない位置に離れていくようで、心配なのだ。

ジュニア時代は、週に2~3回は遊びに来た。ニックに、ガールフレンドが出来、月に一度も来ないことが有った。バスケが上手くゆかないのでサタケの駐車場で、暗くなるまで特訓してクラス対抗戦に備えたり、スキーの時期には一式買い揃えに同行したり、面倒を見て来た。特に仲が悪くなったわけではないが、ケンタのスクールライフが充実し交友関係が広がったことにも原因があるかもしれない。

ケンタは、マイクから来た電話が今でも気になっていた。「誰かの視線が監視されているようだ」と言う、マイクにしては同じことを、1年も過ぎた先日も口にしたのだ。マイクは、性格も温厚で他人から恨まれることは無いと思うが、オロフレ峠の事件は異常者の犯行に類するものだ。

(あやめ)

マイクの電話に危惧

ケンタは師範代行

  もしかして、その延長線???  でも、誰が軍司令部近くに入って?

マイクは、左足の膝関節と靭帯を手術、リハビリも順調に仕上がり、通常の歩行に支障は無くなった。勤務も大隊本部の作戦司令部に移動し、単純な事務職から解放され、以前よりアクティブになったことを、嬉しそうに話していた。ただ気になるのが、姿が見えぬ視線だった。
部隊内には関係者しか居ないし来客があっても、その違和感はないが一人で移動したり、レストランの往復、帰宅時の移動など特定の場所ではなく見回してもそれらしい人物はいない。

ケンタは、11期生でハイスクール3年生だが卒業までは、1年半くらいは、ハイスクールで過ごせる。柔道も2段に昇段して前田先生の代行もこなしている。前田先生から、キャプテンを要請されたが段位は2段で同じだが4年のアーレンが居るので、辞退した。今年の5大湖沿岸柔道大会は、ミルウォーキーの開催で来年はロチェスターで開催することが決まっている。

その日も、午前中から熱の入った練習で、紅白の勝ち抜き戦を展開していた。その時、柔道部の事務コーナーの電話がけたたましく鳴った。ケイートマネージャーが受話器を取って
「ケンタ~電話よお家からよ」と呼んでいた。キャプテンのアーレンに審判を頼んで、受話器を受け取った。

自宅から電話

「はいケンタです」と、応答。「あ~直ぐ帰れるかね?」タダシお父さんだ。
「何かあったんですか?」と、忙しく聞く。「うん、フォートルイスに行くことになったんだよ」と、お父さんは落ち着いた声だ。「マイクに何かあったんですか?」ケンタが慌てる。「それがよく分からないが、重大なことだと言うだけだ」と、言葉を濁す。
「分かりました、前田先生に話して許可を貰います」と、ケンタは切ろうとすると、
「すぐ車で迎えに行くから、柔道場の外に出ていて」と、まだ話して居た。「分かりました」

前田先生に話すと「軍で家族を呼ぶことは、ほとんどないのだが、直ぐ帰りなさい」
「大会を前に申し訳ありません」と頭を下げた。「気にしなくていいよ、ニックも初段を取ったらかなり自信が出て、頼もしくなったよ、任せなさい、ファミリーは大事だから出来ることは最善を尽くしなさい」と、前田先生が眼を見つめている。「分かりました、失礼します」と、道場には戻らずロッカーから外に出た。ケンタは途方もない問題が起きたようで不安だ。