マイクの帰隊

健太の留学

名残惜しむ帰隊

父タダシさんに託す

健太は思わぬ展開に少し戸惑ったが、カルルスの原生林でマイクと遭遇した時よりは、冷静に対応している。

マイクは、部隊に復帰する日も近く、家族サービスで家族を乗せてはオンタリオ湖の湖岸の景勝地で食事をしたり、少し離れたナイヤガラ瀑布にも出かけたり忙しい日々を過ごした。
健太を連れて映画館に行くと、西部劇と一緒に日本の映画も上映して居たので日本の映画を、アメリカで観ることになった。
もちろんカルルスには映画館もないし、登別温泉街の映画館には1年に2回か3回位しか行けないので、今日見た映画は「羅生門」とかいう有名な映画らしが、健太には難しくて良く分からなかった。

マイクは健太の事が気になるらしく、地元に居る友人ニックに健太を引き合わせ何か有った時は面倒を見るように頼んでくれた。ニックは、大学生のころまで病気がちで、軍隊には行けず地元で司法試験に受かり弁護士事務所に勤めていた。
もうすぐ、自分の事務所を開いて独立することを話しながら、
「新しい薬のお蔭で何とか生き延びることが出来た」と、嬉しそうに話して居た。

 

(あやめ)

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翌日、家族そろってグレーター・ロチェスター国際空港へ向かい、マイクを見送った。キョウコお母さんは、マイクの足が完治しないのが気になり、何かと言葉を掛けながら、
「除隊することは出来ないのか?」とつぶやく。

「一度隊に戻って、診断してから変わるかも知れないが、今は勝手に動けないんだ今回は健太君の留学手続きで保護者として1週間の時間を貰ったが、本来は素通りで帰隊していたんだ」

「国務省扱いの特待生「ケンタ ヒノハラ君」の同行者として、許された異例の帰郷でラッキーだったよ」と健太の肩に手を置いて、少ししんみりしていた。
「お父さん、リチャード先生に「健太君の特待生の件」は、宣伝しないように頼んで下さいよ、校長は名誉なことだと嬉しそうだったが、健太君の負担になりそうで心配なんだが~」

「うん、分かった私もヒマだから時々学校に顔を出して様子を見るよ、保護者としての当然の義務だからね」と、胸を張って笑っている。

マイクは、少し左足をかばいながら搭乗口に向かいながら、ここで初めて陸軍の略帽を被り、回れ右で軽く敬礼をして、公私を切換たようだ。

タダシお父さんと散歩

翌日の午後

タダシお父さんと散歩がてら、少し遠いがジュニアハイスクールまで歩いた。それは、マイクが搭乗直前に言った「特待生扱いの件」が気になったので、校長にそれとなく広がらないように、先生方に口止めを頼もうと考えたのだが……もうすでに遅かった。

ミーティングルームで、何人かの先生が盛り上がっていた。校長は不在だったが、先日お会いした先生方なので、すぐ打ち解けた。それは、健太が柔道の有段者になれるのに小学生だったので、段を貰えない話になって居た

「健太君は、柔道の経歴は長いが、小学生なので昇段試験などを受けていないので実力は分かりませんから、そっとして置いてください」と、お父さんが頭を下げてお願いした。
「それでは、勿体ないからハイスクールの道場で練習して貰い、昇段試験を受けてみたらどうですか?」と、若い先生が言い出した。

「そうだ、前田先生は日本人の柔道家で、健太君を紹介して部員にしてもらいましょうか?」
「健太君!どうだ 先生方の話理解できたかい?」と、お父さんも心配顔だ。
「はいっ、大体わかりました、大変うれしいです,アメリカでは柔道をすることは無いと思い柔道着を置いて来ようとしたのですが、マイクに《練習しないと実力が落ちるから、柔道着だけは持って行って機会が有ったら続けなさい》と言われました」と、正直に言う。

「それはラッキー、ジュニアからスター選手が登場したら、ハイスクールでは驚くだろうな~」と先生方が、また盛り上がる。タダシおとうさん
「念のため、特待生の話は内密にして欲しいのですが」と言うと
「サタケ先生、どうしてですか?こんな名誉なことはどんどんアピールした方が良いですよ」
「健太君の将来にとっても、すごい勲章になる訳ですから、隠す必要はないと思います」

「ただ、事故の内容が複雑なもんで、気にしたわけですが~健太君どうしたら良いのだろうか?」とお父さんが心配顔だ。健太に、同意を求めた。
「まだ、入学する前ですから話題が広がらない方が良いように思います、ある程度学校に慣れて柔道の稽古などしながら、自然な形で認めて頂いてからでも良いような気がします」

 

先生方も、少し落ち着いた

「なかなかしっかりした意見ですね、それなら前田先生に入部の手続きをしておきますから、都合のいい時から練習できるように手配して置きます」と、教務主任のオーツ先生がまとめた。
「オーツ先生、宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」と健太もお父さんに続いて挨拶をした。
「柔道場は、どの辺にあるのですか?」と、お父さんが聞くと、
「ジュニアとハイスクールの間の体育館を改築するとき、柔道場と剣道場も作ったのです、私もこれからハイスクールに行くのでご案内しますよ」と、積極的だ。

「健太君どうする~」
「道場は開いているのですか?」
「今は、夏休みと言うか、入学前だが在校生の部員は毎日のように練習しているようだよ」
「お父さん、見てみたいですが良いですか?」
「じゃ、帰りながら寄ってみましょうか、みなさんいろいろと有難うございました、今後もよろしくご指導のほどお願いします」と、深々と頭を下げた。
先生方も、慌てて姿勢をただし会釈や、頭を下げたりバタバタと礼を返していた。
柔道場に近づくと、英語の掛け声と同時に日本語の声もして、にぎやかな雰囲気が伝わってくる。