バスツアー最終コース④

健太の留学

話しに夢中!

バスの席は、

一番後ろに6人が、話しやすいように、陣取った。バスは、ロチェスター国際空港が終点で、空港からロチェスターの中心街行きの始発バスがあるので都合がいいが、ドーリィーたちは途中下車になる。「ミスター ヒノハラは日本語は当然上手でしょうが、英語の専門学校だったのですか?」と聞いて、「あれっわたし取り調べみたいな口調ね、失礼しました」と、ドーリィーが謝った。

「何度か聞かれましたので、慣れてきましたが普通の小学校です、こちらではエレメンタリーと言うようですが、山の中の分校でしたから英語は全然学習していません。留学が決まってから4ヶ月くらい、特訓を受けました~」 もう一人の女子の学生が、「あ ~ら私未だ名乗って居なかったけど、サリー・ブラーウンと言いますが、分校はサブスクールと言うのでしょうか」

「そうですね、大きな街にメイーンの本校があり、通学困難な場所に集落がある場合、サブスクールを設定して大きな行事の時だけ本校に集まります。わたしの住んでいたところは、メイーンの街から13キロメートル位離れ、通学バスもないので7歳から12歳までの子供が分校(サブスクール)に通学します」

(ウキツリボク)

分校の話懐かしく

ドーリィーは鋭敏な突込み

「冬の降雪は、3メートル以上にもなるので、除雪も間に合わず1週間くらいの不通は当たり前です」と、健太が話すと「アメリカにもそんなところはあるだろうな、ここも降雪は多いがサブスクールみたいなシステムはないが~」と、もう一人の男子生徒がつぶやく。

「あっ さっきの英語の話ですが、日本人の女性が1950年ごろ留学し卒業後に、陸軍の将校さんと結婚した人です。僕のために週5日30時間くらいの特訓でした、日常生活も日本語禁止で辛かったですが、1か月くらい過ぎたころ急に気持ちが楽になりました。あれが『壁』と言うのでしょうか?」

「リチャーズ君は、同じ年齢ですがヒノハラ君と気が合うようですね」と、ドーリィーが、ニックにも質問を始めた。「ケンタは、ロチェスターに来る前からヒーローだったのでジュニアでも人気者で、僕が隣の席でしたので会話が多く、直ぐ友達になりました。柔道部にも一緒に入部しました」と、ニックも明るく対応している。

「ジュニアにも柔道場があるの?」「柔道は、ケンタが特待生なので隣のハイスクールの柔道部に特別に入部を許可されました、シカゴの大会も特別扱いが団体3位で、個人優勝がヒノハラ ケンタでした。」「ヒーローって何かやったのですか?」と、サリーが急所を突いてくる。ケンタも仕方なくどこまで話すか、一呼吸置いてから

「ロチェスター出身のマイク サタケと言う将校が、訓練中にカルルス温泉の近くで崖から転落して、救出に手を貸しヒグマの住む原生林で2日位、2人で救出隊を待ったのです」「2日間も、食事や飲み水などどうしたのですか?」と、ドーリィーが厳しい質問だ。

「実は、垂直の岩壁の割れ目に、洞窟があって私の祖父が保存食をを貯蔵してあるので、1か月くらいなら大丈夫なくらいありました、水は岩壁から清水が流れていますので、こちらも十分でした」「ただ、マイクさんが骨折と外傷もあったので、応急処置が大変でした」

「わ~もうすぐライリー湖だよ、ヒノハラ君の講義は次のバスツアーまでお預けだよ」とファンダースが大きな声で、立ち上がった。「この続きは、ホープヒルズに押しかけて聞くツアーを計画します」と、ドーリィーが笑いながら立ち上がりケンタに右手を出して握手をし、ニックも握手をして「今日はいろいろと、失礼なことばかり仕掛けてしまい、申し訳ありませんでした」と、軽く頭を下げた。ケンタたちも立ち上がって、みんなとハグをしたり握手をして、バスを降りる4人組を見送った。

2人の友情も厚く

見知らぬ人たちの祝福も

健太とニックも、何かほのぼのとした気持ちで「また友達が増えたね」と、ニックが話しかける「そうだね、こんなに簡単に交流が深まれば、留学も楽しいね」と、人ごとみたいに話す。
「それは、健太の存在がわれわれネィティブと違う次元にあるんだよ」と、ニックは大げさだ「ニック、友だちの条件は誰でも同じだよ、お互いに信頼できる要素が有れば簡単なんだよ」

「そうかな、僕は健太に憬れと言うか、尊敬の気持ちが強いんでワンクラス上に感じるんだ」と、中々引き下がらない、「だから同じだよ、憧れとか尊敬とか言っても、その究極は信頼、いわば友情と同じ次元だよ」「そうかな、兎に角お互い大事な友達で裏切りの無いお付き合いをお願いします」と、右手を出して握手を求める。

周りの乗客は、少ないが2人のやり取りを眺めて、関心が無い顔でよく聞いている。健太も意識して右手を出して握手し「これからも宜しくお願いします、アメリカの師匠どの」頭を下げる。ニックも、慌てて頭を下げる礼をする。横の席の中年のご婦人が、小さく拍手した。
周りの人たちも、同調して軽く拍手する。

2人は、揃って立ち上がり「ありがとうございます」と、頭を下げながら日本語で礼を言う。