真剣勝負が続く(サマー④)

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合宿も中盤

今朝はお母さんが当番

合宿も1週間が過ぎ、今朝はキョウコお母さんがモーニングサービスの担当だった。

時々家でごちそうになる、中華風のホットスープだった。帆立の貝柱を刻んだ具や昆布で採ったダシは和風味になって居るが、部員やOB・コーチからも好評で、お替りが続出した。いつものように野菜サラダやデザートも盛りだくさんで、ニックも、スープをお替りしながらコッペパンを浸して食べていた。当番の大人にも好評なようで、予め別の鍋に取り置きして対応したようだ。

前田先生は、大会出場選手候補10名を中心に、チーム編成をして本格的な臨戦態勢の練習に入ることを発表し、10名を二つに分けたA・Bの2チーム、残りの10名からCチーム、さらに初心者や下級生組からDチームの4チームを発表した。抽選で対戦を決め、白熱した試合が続いて午前中に2回のトーナメントを実施

(あじさい)

A・Bが1勝ずつして、午後は各チームから最強の選手を先鋒にして勝ち抜き戦を実施した。
組み合わせは、抽選でAチーム対Dチームで始まり、BチームとCチームが続くことになった。各チームが作戦タイムに入ったが中々決まらず、観覧席の父兄たちも興味しんしんで、ランチの準備の時間も気になるらしく、そわそわしている。

前田先生は、チームリーダーに任せているので、のんびり待って居たが、
「今日は、まだ合宿中の練習試合だから、先鋒経験者から決めて始めましょうか?」と声をかけた。各リーダーが素早く記入して、ケイートさんに渡し試合開始。

Aチームの、昨年秋初段になったシンプソンが、Dチームのトーマスに体落としで簡単に負けてしまった。トーマスは、シニアの初段だが、左肩脱臼でしばらく練習していなかったが、合宿には参加したいと言うので下級生の初心者たちと基礎訓練に集中していたのだが、シンプソンが油断していたようだ。

Bチームはケンタが先鋒で、やはりトーマスとは昨年は乱取りなどで手合わせをしていたが、今年はしばらく振りだ。最初は少し離れ、相手の左袖を取りながら様子を見たが、左肩に不安があるのか力を入れていない。一瞬の迷いが、相手に伝わったのか左襟から体を寄せられ、背負い投げに形になったので、ケンタは逆に身体を寄せて右足で相手の左足に払って、大外の形でひっくり返した。前田先生が「いっぽん」を宣して
「ヒノハラ君、迷ったね!勝負は絶対躊躇してはいけません、トーマス君気付きましたか?」

「左肩に力が入らないので、ヒノハラ君に袖を取られましたが、仕掛けが無かったので一本背負いを考えましたが、さっすがヒノハラ君の返しは素早くて、やられました」
Cチームから、シニアの一級で元気なアランが先鋒だった。11月の段級試験にチャレンジするので張り切っている。ケンタとは毎日のように組み合っているので、お互いの得手不得手を知っているので動きは早いが中々勝負まで行かない。

ケンタが相手の顔を見ながら、汗が目に入りそうで一瞬目を閉じそうな気配を見た瞬間、身体を沈めながら後向きので腰を入れ、右足で相手の膝付近に絡ませて、払い腰の形で「いっぽん」を取った。各チームの先鋒が終わり次鋒の番だが、勝ち抜きの辛い所は、勝って居る限り続ける運命なので、疲れてきたが気が抜けない。

勝ち抜き戦はキツイ

水補給ブレィーク

Aチームは、次鋒だが初段をとって3年目のチェーイスが出てきた。いつも7:3くらいの割で負けているのでケンタは今日もここで終わりだなと思い「先生、水を補給して良いですか?」と聞いた。「あっ そうだ気が付かなくて悪かった!勝ち抜きは長い戦いになるから、水の補給が大事だったね、一呼吸入れなさい」と、審判の先生に許可が出た。

「チェーイス君、少し待ってください」「はいっ 分かりました」
「他の皆さんも、練習も大事だがもっと大事なことは自分の体調は、自分が一番先に気付くわけだから、無理したり我慢はしないで申し出て下さい」と、前田先生も一呼吸入れた。

「では、チェーイス君とヒノハラ君の試合を始めます」「始め!」と、大きな声で開始した。
チェーイスにも勝ち、Bチーム以外の3チームの次鋒・中堅・副将まで戦い疲労困憊で、Aチームのフィリップキャプテンに、内股で簡単に負けた。13人目に負けた。やはり最後まで勝ち抜いたのがフィリップだった。

「合宿は残り3日です、A・Bの組み合わせは10名の候補で編成し、別メニューになります。他の皆さんは各コーチが付いて最後の特訓があるかも知れませんが、頑張って下さい、なお合宿の終了日は少し早めに終わり、荷物などの持ち帰りなどの時間を取ります」
「その翌日、打ち上げを行います、場所と内容は最終日の練習が終わった所で、話します。今日の練習は、これで終わります、道場の掃除を終わったら、座禅を30分行い夕食にします」

今日は、キャプテンに代りマネージャのケイートさんが
「ご苦労さんでした、道場の掃除は、今日のA・B・C・Dの4チーです、そのほかの人はロッカールームと、シャワールームです、それでは解散」
部員全員が「有難うございました」と唱和して、一斉に掃除に取り掛かった。
(まるで日本の高校の部活の雰囲気だ)

合宿日最終日

3日間は徹底した試合形式

最終の3日は試合の連続で、審判もOBのコーチが2名副審として場外から試合の進捗を補助した。(現在のように、副審が椅子に座って居ない)

代表候補の10名が、真剣に試合をするので候補以外の部員は、自ずと試合に意識が行くので他の練習は中止し観戦の形にした。朝夕の基本練習や掃除、座禅などは、35名全員が同じメニューで参加する。

畳の上に10メートル四方にテープを張って試合場を設定、センターに4メートルの間隔でしるしを付けて、試合場に入る時から審判に指示に従って、礼をしてから試合場の真ん中で4メートルの印で向かいあって、審判の「始めっ!」の、合図で開始する

試合が始まる前から、今までとは違う雰囲気は空気が張りつめ、観覧の部員も父兄も緊張感があって勝負に集中し、いつものザワメキもない。試合をする選手は、代表に選ばれるかも知れない試合なのだが、その堅苦しさは無く周りを気にしないで、柔道を楽しんでいる雰囲気である。

勝ち負けに拘るより、いかに柔道の「形」をなぞって正々堂々と戦うことに徹していた。前田先生の柔道の本筋、「柔が剛を制する」理想の柔道が浸透して来たのだろう。

【注-1】
柔道は、昭和20年の終戦から4年ほど禁止されていたが、昭和24年(1949)から公に許可され翌年から学校柔道も復活,昭和39年(1964)から選択必修となった。1952に国際柔道連盟が発足し、1964の東京オリンピックに男子の柔道競技が正式種目になった。

前田先生が、最後に道場の真ん中に全員を集め、

「みなさん、10日間の強化合宿でひとりの落伍者もなく、最終日を迎えることが出来て有難うございました。これは父兄会の全面的なバックアップのお蔭と、皆さんが真剣に取り組んだ結果です。みなさんはお家に帰ったら、お父さん・お母さんにしっかりとお礼を言ってください」

落伍者も無く終了

「合宿の成果として、みなさんに練習だけでなく試合の感覚を身に付けて欲しかったので、最後の3日間はあまりコメントを言わずに進めましたが、十分期待に応えて呉れました、OBの皆さんも驚くくらいの進歩がありました、代表候補の10名全員を登録したいのですが、規定が5名の正選手と補欠が2名となって居ますので、3名の部員は残念ながら、外れました」

「皆さんの頑張りと慰労を兼ねて明日は練習なしで、バーベキュー形式でランチを私の家にお招きしたいと思います、これもブラウン会長さんに相談したら、関連のレストランから材料とスタッフを派遣してくれることになりました、お天気もよさそうなのでガーディンパーティーにします。皆さんのご父兄もご一緒に来て下さい。11時ごろから始めますので、アドレスとマップを用意していますから、帰りに持って行って下さい」

「ここで、コーチとOBの皆さんに、お礼の気持ちを拍手でお願いします」と、フィリップに目を移した。

フィリップキャプテンがすくっと立ち上がり、「起立っ」

「コーチ・OBの皆さん有難うございます。前田先生有難うございます」と、応援団のような大きな声でリードした。部員の一斉に立ち上がり、唱和を続け、大きな拍手が長く続いた。これも、日本の学生運動部を連想させるワンショットである。

ケンタとニックが、お父さんの迎えがくるまで、外のベンチでしばらく振りのおしゃべりだ。候補部員10名から3名が代表から落ちて、その中にニックも含まれ残念だったが、本人は意外としっかりした意見を持っていた。
「選ばれる器じゃないのはわかって居たから、気が楽になったよ、あれだけ練習できて段級試験の雰囲気が体感できたよ。もう少し、身体を作らなくちゃ大会は無理だよ、勝ち抜き戦なんかの場合チームのお荷物になちゃうし寝技なんかは絶対不利なことも分かったよ。ケンタが6歳から10年近くのキャリアは本物だと分かったよ」

「ニックは、ネティヴなのに僕と考え方が同じで、気楽に話せるのが凄く楽で助かっているんだが、今回の代表にならなくても次回からは常連になる力が付いているから、段級試験一本に絞って一緒にやろうよ」

「ケンタは、大会の個人2連覇が掛かっているから、頑張ってくれよ」
「大会の、試合はいろいろな駆け引きもあるし、運があれば勝てるかも知れないが、狙っても無理だよ」翌日、エリー運河に面したグリーンのガーディンから、美味しい焼肉の匂いが通りまで漂っていた。

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