岩窟の隠れ家へ初の訪問者は重症患者だった

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藪の中の治療で藪医者だ!

祖父は医者だとは聞いた事が無い

体が自由に動かないので、服を脱ぐのも大変な作業のようだが、ここは手を出さないほうがうまく行くので、祖父も黙って見ながら傷や打撲部分を点検していた。祖父は、医者ではないのだが健太が悪戯して怪我をしても、絶対怒らず手際よく治療してくれるので、父も母も任せっぱなしであった。

普段は殆ど無駄口はしゃべらない祖父がボソッと
「藪の中の医者だから、これがほんとの藪医者だな!」と、冗談を云いながら手早く添え木を造り「左大腿部は骨が折れているようなので添え木で固定し、あとは打撲とその傷もあるが浅いので応急処置で大丈夫でしょう」と、お医者さんのようだ。

(さくら咲く)

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添え木を付けるとき、マイクにタオルを噛ませ健太も手伝って足をまっすぐ延ばしてから、太い枝を平たく削って、直接肌に触れないように手ぬぐいや布を巻いて、固定した。マイクは、相当痛かったのだろう額に脂汗を浮かべていたが、処置が終わるとコトンと気を失った。祖父は、自分の予備の下着を着せ替え、毛皮の布団をかけた。マイクは、体を動かされたので気づいた。

「あっごめんなさい」
「まだ状況を、話していませんでした!」起き上がりそうな気配だったが、自分が着替えさせられていることに気づき、不思議な顔をした。
「まだかなり痛いでしょう~そのうちゆっくり伺いますから~それより休んだほうがいいでしょう」
「健太、痛め止めの煎じくすりを作って、飲ませてあげて」
「私は、カルルス温泉に下りて連絡してきますので、休んでいてください」
「私のことを報告するのですか?」マイクは心配そうな顔で、祖父を見つめている。

「いや~今日は何も起きていないし、何も見ていませんから話すつもりはありませんが、相談することがあるので2~3人に会って、夜中には帰ってきますよ」と言うと、マイクは安心したように少し笑みを浮かべ、うなずいた。

アイヌ民族伝来の、野草の花や実・根を乾燥させ粉末にした痛み止めで、健太も何度か飲んだ薬だ。粉末をガーゼのような薄い布袋に入れて熱湯で煎じ、少し冷まして飲む。健太が薬を覚まし大き目のコップに入れて
「マイクさん、痛み止めの薬ですが、飲むと少し眠くなりますよ」と、出来立ての薬を差し出した。マイクは、相当痛いのかクセのある煎じ薬を一気に飲み干した。

食べるものは、なんでも蓄えているので何日でも滞在できるが、カルルス温泉で心配するので連絡をして置く必要がある。祖父、一人暮らしだが健太は桧原家の養子で、心配しているだろう。
「桧原さんと、和田先生にも相談してくるから、少し時間がかかるかもしれないな」
「わかりました、明日は学校に行けないな」とつぶやくと
「そうだな、桧原さんに話して朝連絡してもらうように頼んでおくよ」祖父はそっと立ち上がり、身支度をして出かけた。マイクは、薬が効いてきたのか眠り始めた。

岩盤ベットにマイクが

サイドベットに健太が毛皮を被る

に潜り込んで横になったが気になって、寝付かれずウトウトしていた。マイクが、無意識に寝返りをしようとして、傷が触ったのか大きなうなり声を出した。苦しそうなのでランプの芯を、上げて明るくすると顔が赤く汗が光っている。健太は慌てて、洗面器のタオルを絞って額にのせた、体も熱くて苦しそうだ。マイクも自分の声に気付いたのか、目を覚ました。

「健太君、寝ていなかったのですね、水をお願い出来ますか?」と、弱々しい声がした。健太は直ぐ飛び起きて

「冷たいのを汲んできますから」と、やかんをとりに行くと」

「今、入っているで良いですから下さい」と、言うのでやかんとコップを持ってゆく

「直接飲んでもいいですか?」健太がやかんを口元に近づけると、自由がきく左手を添えて、ごくごくと飲み始めた。フッーと、息をしながら

「ありがとう」と、満足そうな顔だで、やかんはほとんどカラになった。

健太は、マイクの顔を見ると又汗だらけなので、タオルを濡らして

「汗を拭きましょう」と言いながら、顔から首筋を拭き始めると、自分でやりますというので、2本目のタオル濡らしてベットの脇にに置き、

「新しい水を汲んできます」と、やかんとバケツを持つ、マイクは、済まなそうな顔で

「健太君ばかり働かしてごめんね」

「マイクさんは怪我人なんだから、心配しないでください」と、言って洞窟を出ると東のほうが明るくなり始めていた。崖の割れ目から、身体をねじって降りようとすると

大きな荷物を背負った祖父

洞窟ダイニングで豪華なモーニングサービス

「おっ 水汲みか?遅くなったが、飯も調達出来たぞ」と、祖父が近づいてきた。両手に風呂敷包みと背中にも、何か背負っている。

「マイクさんが熱が出ていて苦しそうなんだ、新しい水を汲んでくるから」と、両手に、バケツを下げて歩き出した。

「まだ薄ぐらいから、足元に気を付けて行って来いよっ」と、背負った荷物を手に持ち岩の割れ目に体を入れた。水を持って戻ると、祖父が荷物をほどき始めていた、旅館のおヒツや重箱がありいい匂いがしてきた。マイクの分として、卵焼きやベーコン・サラダにスープなど特別なメニューだ。今朝の朝食は、豪華な献立で、両親との食事を思い出したが、口には出さない。

マイクに起き上がれるか聞いてみると、上半身だけは起こせるようなので、体の後ろに毛皮の布団や衣類入れの箱を並べ、足を投げ出した状態でスタンバイ。前に置いた木箱の上からスプーンを取ろうとして手を止めた。マイクが、何か言いかけて一呼吸おいて

「私の事情も聴かずにこんなに歓待して貰うのは、申し訳ないので話します」と、真剣な面持ちで話そうとすると、祖父が

「そんなに、硬くならず食べながらゆっくり聞きましょうか~」 マイクはそれでは大変失礼なのでと、スプーンを取らない。

「この洞窟にも、大きな秘密があるしマイクさんの事情も深刻なようなので、ハーフハーフでしょうから」祖父は、完全に割り切っているようだった。

マイクは、気を取り直して話し始めた》
自分は日系三世の家で祖父母が日本人で、母も日系二世なので日常の会話は日本語が多かった。1948年にウエストポイントに進み、卒業したころは朝鮮戦争の真っ最中だった。マイクは、自分の家系が日本にあるので、体験も含め日本駐留の希望を出していた。陸軍の基本訓練が2年くらい終了し再度申請して、千歳の部隊に欠員が生じ30名くらい横田基地に着任し、そこから日本の各部隊に補充された。名目は終戦処理だが、朝鮮半島は戦時状態で兵士の出入りは激しかった。

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