事故の深刻さと偉大な祖父

ヒーロー誕生

マイクの話は信じたくない話だ

祖父も事態の深刻さを憂慮

祖父もマイクが遭遇した経緯を聞いて、肩で息をしたように見えた。マイクも、食事は殆ど食べたが顔の赤みがあり、まだ熱があるのだろう。祖父が、マイクに声をかけ患部を点検した。和田先生からもらってきた薬を広げ、先生の説明を思い返しながら打撲の塗り薬や湿布、骨折部分の添え木の緩みを締め直した。化膿止めの薬やや栄養剤も、ぬるま湯をコップに用意して手際がよく、まるでお医者さんの様だ。

マイクも、少し落ち付き、軽く目を閉じたので眠いのだろうと祖父と健太は離れた。祖父は、健太をトンネルの外に連れ出し、これからの予定を話してくれた。

 

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祖父は超が付く予知能力者だ!

人脈を使い作戦・配置・行動力


その理由は、
昨日、用事から帰ってみると、カルルス温泉が異様な雰囲気になって居たらしい。、米軍の兵士が2台のジープで乗り込み、米軍が英語で早口で喚き散らし
「怪我をした外人を見かけないか!」と、銃弾を装填した銃を脇構えで探しまわっているのを目にした。
桧原さんから、健太が戻らないことを知らされ胸騒ぎがし、夕方岩窟のオヤジの家を目標に探し、健太がマイクを運んでいるのを確認、さっきの外人の仲間だと直感し、何かトラブルで離脱したものと考え、救助の方法を考えたようだ。

【この若い兵隊の落ち着きと、捜索隊の慌てた様子が奇妙だった。英語でまくし立てるが、意味が分からない住民が怯えて、家に引き籠っている。祖父は英語を理解できるので、内容は分ったが場所や時間が曖昧で、何で怪我をしたのかも明かして居ない。
下級兵士を、中年の下士官が指揮を執っているようだが、いら立っている。捜索の連中は、一旦引き上げたが温泉から少し離れた道に車を止め、見張っているのも気に食わなかった。
あの様子だと、マイクの姿を見たら有無を言わさず発砲してくるだろう、その足で温泉の裏から原生林に入り、洞窟近くで健太とマイクの匍匐移動を手助けした】

祖父は、昨夜洞窟からカルルスに行き、旅館の主人や和田先生に相談して、マイクを密かに移動して治療する相談をしていたのだ。旅館の主人は、住込みの料理人に頼み、食事を作り祖父に持たせ、今晩からは一人住まいの和田先生のところにも、食事の供給を約束してくれた。
和田先生は、夜間だが登別国立病院の元部下の医者に、事情を話して最終的に収容することを決めた。(和田先生は前の院長で、カルルス温泉の外れに別荘替わりの夏季診療所を開き、住民サービスをしていた)祖父は、夜の間に白老のコタンに行き、古老に会い若者5~6人の助けを約束してきたのだった。

2時間くらい経ち、洞窟に戻るとマイクも目を覚まし薬が効いたのか、少し明るい顔になった。

祖父が訥々と経歴を話し始めた

健太も初めて聞く話だ

マイクから、事故か事件か不明だが聞き手2人(祖父と健太)は事件と思った。
一通り聞いた祖父が、自分の経歴と、この岩窟を居住可能にしたいきさつを話し始めた。

「少し長い話ですがこの健太も温泉の誰も知らない事です」と、切り出した。
マイクも身体を起こし、健太が背中に布団などを積んだ。祖父が、10代から外国船の船員で英語やオランダ語とフランス語が少しわかり、40代まで乗船して外国を回っていた。下船したことをコタンで聞きつけ、村長に戻ることを強く要請されたが、閉じこもる気はなくコタンから離れたところに、家を建て祖母と小さな畑で野菜を育て、時々虎杖浜の海岸に出て釣もやるし、のんびりした暮らしだった。千代が生まれ中学を卒業して高校を進めたが、当時の風潮で中々思うように行かない事情があった。民族問題だ。
千代がカルルスの旅館で仲居の見習いをやりたいと言うので、祖父も時々顔を出すうちに、器用さを見込まれ湯元の桧原さんや、旅館の仕事をこなしながら自由気ままに暮らしている。終戦直後、洞爺湖から登別に抜けるオロフレ街道で、米軍の車両が軟弱な路肩から転落して重軽傷者も出る事故があった。当時、日本全体が米軍に対して緊張感を持ち、お互いに信頼していなかった。そんな最中、事故で救援を求めて来たが誰も近づこうとせず、離れて眺めている状態だった。

率先実行で範を示す

言葉でなく行動で繋がる

そんな時、祖父が山仕事から帰り騒ぎに遭遇、救出に手をだした。負傷者の手当までしていると住民も参加し始めた。温泉に2台しか無い小型トラックで 負傷者を温泉まで運んで、手当てをしたり、車両の引き上げも積極的に手伝い、最後は住民総動員の形で参加した。

泥まみれの兵隊を温泉につれてゆき、共同浴場で洗い場で泥を洗い落とす、小学生もいたりして、一気に親睦が深まった。それは祖父が英語で対応できることが、重大なポイントだった。

その後で、千歳から米軍の責任者が、祖父を訪ねてきて
「お礼をしたいが、何かありますか?」と聞くので、
「特にありませんが、お互いに仲良くして行きたいですね」と答えると、にっこり笑って
「イエス」と短く返事した。